閉店まじかの夜、9時をすぎた頃。
最近、ひんぱんにご来店の「皇女/エリザベート」風、ロシア美女が、
「歌姫/テレサ・テン」風、台湾美女を連れて、お店にやってきた。
どうやら、日本語学校でのクラスメイトらしい。
テレサテンがわたしに日本語で話す。
「質問が二つあります。ギオンゴ、ギタイゴの辞書はありますか?」
---( ギ、オ、ン、ゴ、ギ、タ、イ、ゴ --- カタカナが頭の中で飛びはねる)
3歩歩いてやっと音が組合わさり、納得。
--- ああ、あれ !!、ほら !! 擬音、擬態語のこと。
「はい、こちらです、どうぞ」
妖艶な皇女が清楚な姫に、日本語で話す。
「きのう買った ”ジテンシャ”が、あなたのカバンに入っているでしょう?
ちょっと見せて下さい」「いいですよ」姫が答える。
ふたりは、ケロッとしている。
わたしの頭の中は「??--」 で、いっぱい。
わたしの意識は胃カメラのようにスルスルと、
彼女のバッグの底までたどり着く。
そして、まぶたの裏にバッグの底が映し出される。
そこには、ほら!、小さくて赤い自転車が-。
でも、わたしの「理性」は決して黙ってはいない。
(いけない、いけない!そんなことはありえないよ!!)---と
おろかなことを想う「妄想」をたしなめる。
したたかな「妄想」は、「理性」を鼻であしらいながら答える、
(でもこの世では、何でも起こり得るんだから!---ほらね )と、
横たわった小さな自転車に再びピカッとスポットライトを当てる。
わたしの脳内は」「理性」と「妄想」の戦場となる。
理性が勝っている、と人からは言われるけど、
実は「想像力(妄想だろうと)」の重要性を理性の上位に置いているわたしは猛スピードで考える。
---自転車をバッグに入れて歩く事は、日常的なんだっけ??
---わたしはしないけど---.
---バッグに入る程、小さく畳める自転車が最近発明されたのだろうか?
--わたしは知らないけど---。
もし、本当にバッグに自転車が入っていたのなら-----
わたしは再び価値観と常識を全とっかえして、思考経路を組み立て直さなければならない。
仕方がない。
また、人生に幕を引くとするか。
でも、この年で、なんか、大儀だなあ。
いっそのこと、この地球におさらばして、猿の惑星に住民票を移しちゃおうか?
---ドーパミン流出の活性化とともに、こもごも事後処理が頭に浮かぶ。
頭の中で嵐が吹き荒れた3秒のち、
「でも、もしや」と思って、念のため姫のバッグを覗き込んだところ、
なんと、そこには「ジショ/辞書」があった。
「ジテンシャ」ではなくてね。
フウ---。
時計を見たら、9時20分。
とりあえず、今回は猿の惑星へ、移住はしなくてもよさそう。
つかれたなあ。
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