木曜日, 8月 23, 2007

黒部の杣人/そまびと

「感動」ってこんなことだと思う。

花火のような衝撃--
「わあ!びっくりした!」「えっ!! ほんとう??」
こんなドキドキが、
わたしの頭蓋骨を突き抜け、大気圏を突き抜け、
その感動を引き起こした対象に走って行く。
それはもう、わたしの専用道路。

当然その後は、何の予約も手続きもいらず、
行きたい時に、すぐそこに行ける。
そう、一度感動したら、二度も三度もおいしい。

何年か前にTVで見たのだが、
黒部かどこかの山中に住む、年老いた木こりの得意技。
大きな木の上部を伐採している時は、
昼どきに地面におりて行くのがおっくうだ、という。
そこで彼は、樹木の上にあがったまま弁当を使うことにした。
でも、ただ、食ったんじゃあ、能がねえ--(そうかなあ?)
そこでひとひねり。

そうだ、逆さまになって食うぞ!!

彼は足を”ハ”の字に広げ、つま先を枝に引っ掛けて逆さまになった。
そして、
はしを使って弁当を食べる。逆さまのままで。

日ごとに上手になっていくそうだ。

TVに映るのは、赤銅色に陽焼けたしわだらけのおじいさん。
だけど彼の瞳の中には、12歳の男の子が飛び跳ねていた。

彼の長い人生の中で起きた「何か」と、
彼の中の「何か」が、触発し合って
こういうことを思いつくような独特のシナプス構造を営々と作り出し、
そして、何ら邪魔するものも無く実行に至らせたのだろう。

わたしの胸の中でも何かが飛び跳ねるものを感じた。

何年たっても、くりかえし、くりかえし、
思い出されることのひとつです。

もし、この先、
黒部か丹沢辺りで、
変なおばはんが木にしがみついていたら、
それ、きっとわたしです。
(わたしも、ちょっとやってみたいもの)

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