月曜日, 7月 30, 2007

一体誰が使う?この手紙のサンプル。

「一葉の四季」森まゆみ著、を読んだ。
樋口一葉は明治5年に生まれ、
「にごりえ」「たけくらべ」などを書いた作家。
東京府庁勤務であった父親我生きている間は中流程度に暮らせたので」、
小学校卒業後は「萩舎(はぎのや)」で和歌、書道、古典を学んだ。
大変な秀才であったそうだ。

父を亡くした後17歳で戸主となったが、とたんに貧しい生活となり、執筆だけでは暮らしがなりたたず、マッチのラベル張り、質屋通いをしながら母と妹で暮らした。
24歳、肺結核でなくなるまで、ほんの9000日足らずの短い人生だった。

「たけくらべ」「にごりえ」などの作品を書いていたが、
これらの作品は、一葉の死後刊行されたので、
一家の生活はとても厳しいものだったらしい。

唯一、生前に刊行されたのが「通俗書簡集」で、
これは手紙の書き方のサンプル集みたいなものである。
文例が面白い。
季節の挨拶はさておき---
「カルタ会の時、懐中時計を忘れて行ったのを、返すときの手紙---」
「暴漢に教われた紳士の妻を見舞う手紙---」
一体、誰が使うんだ? と言いたくなるような設定なのが実に愉快。

この時、すでに起きる力もなく床につき、
半年後には亡くなってしまうのだが、
こういうものにも一葉は想像力と創造力を惜しみなく出している。
一葉は短い人生をフル稼働で生きた。

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