月曜日, 4月 06, 2009

男のプライド



以前このブログで、飼い主の伴走がないにも関わらず、決められた通り真面目に駒沢公園をダッシュで三周も走ったり、雨の日の散歩の時、ゴミ用の黒いビニールの袋を着せられて嬉しそうに歩いている可愛いオス犬たちの事を書いた事がある(”オス犬のプライド”)。
あっぱれだ---、 けなげだ---、心意気がかっこいいじゃない!--、とわたしの心にきっちり刻まれたので彼らの姿は死ぬまで忘れないと思いますが、同じく誇り高き振る舞いを駒沢公園で見た事がある。

もう四半世紀も前、北風がヒュウーヒュウーと音をたてて吹きまくり、クロワッサンのかけらのような枯れた木の葉が空中高くまで舞い上げられていた冬の駒沢公園でのこと。娘の遊び仲間の一人でなまえは忘れてしまったが3-4歳の男の子があの寒さの中、自分の小さい三輪車で丘あり谷ありの駒沢公園サイクリングコース(2.2KM)を一人で走って無事に帰って来た。
待っていたママさんはもちろん、私たちも「すごいねー」「よくやったねー」「えらいねー」とほめた。
頬を赤くして興奮した面持ちの坊やは三輪車に乗ったまま私たちの賞賛を受けていたが(男の子って一般的に口が遅いから、まとまった事は何も言わないのね-)やおら投げ捨てるように三輪車を降り、地面にすっくと仁王立ちになったかと思うと彼の両の目からみるみる涙があふれてきた。口はミミズ文字の「への字」にゆがんで両手はしっかとこぶしをにぎり、鼻水と涙とホコリでくしゃくしゃになった顔でママを睨みつけている。周りを囲んでいた私たちが ”いったいどうしたの?”とびっくりする間もなくその子は泣きじゃくってママに駆け寄り、しがみつくと同時に言った。
”ママ、抱っこ!!!”その子の涙と鼻水が私たちに降り掛ったものだわ。

大仕事をした後だから、本当はママに甘えん坊な心をぶつけたいけど彼はそれを「潔し--」としなかったのね。でも抵抗しきれなかった。そして「無念」のくやし涙 --- ”そうか、そうか、君、よくがんばった!!”

仲間で真紀チャンと言う女の子がいた。少し年上で4歳か5歳。彼女も駒沢公園を三輪車で走った。
”お帰り-”と声をかけてふと足もとを見ると、履いていたサンダルが足の甲にあたって摺れて皮が剥け、血が出ていた。小さい足は薄赤い血で濡れてていた。ハンカチで拭いて上げたら「ありがとう」と言っていた。
枯れ葉とホコリをお供に引き連れ、めちゃくちゃに吹きまくっている北風の中、わたしは決して泣かなかった幼い頃のわたしと真紀ちゃんをそっと抱っこしてあげた。
Picture from Blue Parrot Librqry

0 件のコメント: